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更新日:2024年09月10日
「オハイオ研究(Ohio Studies)」は、リーダーシップ理論や行動理論において極めて重要な研究とされています。1950年代から1960年代にかけて、アメリカ合衆国オハイオ州立大学で実施された一連の研究で、効果的なリーダーシップ行動の特定とリーダーの行動が組織のパフォーマンスや従業員の行動に及ぼす影響を明らかにすることが目的でした。当時、第二次世界大戦後のアメリカ社会では組織の複雑化が進み、効果的なリーダーシップの必要性が高まっていました。戦後の経済成長と産業発展により、企業や組織は多機能的かつ多層的になり、新しいリーダーシップスタイルが求められるようになったのです。特に「特性理論」から「行動理論」への研究の移行期にあったこの時期に、オハイオ研究はリーダーシップの行動を体系的に分析し、具体的な行動を特定することでリーダーシップ理論の発展に大きな影響を与えました。
オハイオ州立大学の研究者たちは、さまざまな組織(企業、軍隊、学校、政府機関など)を対象にリーダーの行動を評価するため、大規模な調査を行いました。「リーダー行動記述質問票(LBDQ: Leader Behavior Description Questionnaire)」という標準化されたアンケートを用い、リーダーの行動についてフォロワーがどのように認識しているかを評価し、特定の行動パターンを明らかにしました。その成果として「構造の開始(Initiating Structure)」と「配慮(Consideration)」という二次元モデルが特に重要です。「構造の開始」はタスクオリエンテッドなリーダーの行動で、仕事の目標設定、役割の明確化、業務の計画と組織化を行う行動を指します。「配慮」は関係性オリエンテッドなリーダーの行動で、フォロワーの個人的なニーズや感情を尊重し、支持的で良好な関係を築く行動を指すものです。オハイオ研究の二次元モデルは後のリーダーシップ理論に大きな影響を与え、「マネジリアルグリッド」や「SL理論」といった新しいリーダーシップ理論の基礎となりました。「マネジリアルグリッド」はロバート・ブレイクとジェーン・ムートンが提唱したモデルで、「人間への配慮」と「仕事への配慮」という二次元に配されています。一方、「SL理論」はポール・ハーシーとケン・ブランチャードが開発し、リーダーシップスタイルをフォロワーの成熟度に応じて調整することの重要性を説いています。
さらに、オハイオ研究はリーダーシップの測定と評価の基準を提供し、リーダーシップ行動が組織の成果や従業員の満足度に与える影響を明らかにするための土台となりました。しかし、二次元モデルがすべてのリーダーシップ行動を網羅しているわけではないという批判もあります。また、リーダーシップ行動は状況によって変わるため、すべての状況で同じリーダーシップ行動が成功するわけではないという限界も指摘されています。これらの批判と限界を踏まえつつも、オハイオ研究はリーダーシップ理論における重要なマイルストーンであり、その成果は現在でもリーダーシップ理論の基盤として重要視されています。「構造の開始」と「配慮」という二次元モデルを通じ、リーダーシップ行動の具体的な側面を明らかにし、効果的なリーダーシップを理解するための重要な枠組みを提供しました。これにより、リーダーシップの測定、評価、教育に大きく貢献し、今日の組織運営においてもその意義は色褪せることはありません。