TOB

更新日:2024年09月10日

TOBの基本的な構成要素、メリットとデメリット

TOB(Takeover Bid)は、日本語で「株式公開買付」とも訳される手法で、企業が市場で一定の期間と価格を提示して他社の大量の株式を買収します。このプロセスは証券取引所を通さず、直接株主から株式を買い付ける特徴があります。まずTOBの基本的な構成要素を説明しましょう。公開期間は最低20営業日から最大60営業日で、この間に株主は株式を売却するかどうかを判断します。提示価格は通常、現在の市場価格に対してプレミアムが付けられ、これは株主にとって売却の動機を高めるためです。目標とする買付け株数も設定され、最低限必要な株数以上を取得する場合もあります。次にTOBのメリットとデメリットについて見ていきます。まず、買収者のメリットとして、TOBは迅速に大量の株式を取得でき、経営権を迅速に取得する手段となります。また、株式市場を通さないため、価格の変動を最小限に抑え、他の投資家の介入を防ぐことができます。一方、売却者のメリットとして、株主は通常、現在の市場価格よりも高い価格で株式を売却し、確実に売却できるという安心感があります。しかしデメリットも存在します。買収者にとってのデメリットは、提示価格が市場価格よりも高いためコストが高くなるリスクや、計画通りに株式が集まらず失敗するリスクがあります。売却者のデメリットとしては、TOB終了後の株価変動リスクや、全ての株主が応じる義務がないため買収が難航する点が挙げられます。

TOBの主な戦略とバリュエーション手法

TOBには「友好的TOB」と「敵対的TOB」の2種類があります。友好的TOBは企業の経営陣と協力して行う買収で、経営陣と合意のもとで進行するため手続きが円滑です。一方、敵対的TOBは対象企業の経営陣の同意なしに行う買収で、対象企業はTOBを阻止するための様々な手段を講じます。例えば、ポイズンピルやホワイトナイトといった防衛策が一般的です。次に、TOB成功のためのバリュエーション手法について説明します。DCF(Discounted Cash Flow)は詳細なキャッシュフローの分析によって企業価値を算出する手法です。また、現在の株価や市場価格との比較を基にする市場価格比も用います。これらの手法を組み合わせることで、適正な買付け価格を設定し、株主に対して魅力的なオファーを提供することが重要とされます。さらに、買収対象企業の業績や市場動向を綿密に分析し、柔軟な交渉戦略を構築することも成功の鍵です。これにより、友好的TOBであればスムーズな手続きを、敵対的TOBであれば迅速かつ効果的な買収を実現することが可能です。

TOBの具体的な手続き

TOBを実行するには詳細な手続きが必要です。まず、買付けを行う企業はTOBの意図を公表する前に、法務・金融アドバイザーや証券取引所と協議し、適切な基準や規約に従う必要があります。これが事前準備の初段階です。次に、TOBの開始前には、法的に必要な情報を含む買付け文書を作成し公開します。この文書には公開期間、提示価格、最低および最高の株数などの重要な情報が含まれます。公開買付けが始まると、株主は提供された情報を基に自分の株式を売却するかどうかを判断します。売却を希望する株主は指定された期間内に手続きを行い、買収者が株式を取得する流れです。目標株数が集まれば、買収者は株式の支払いを行い、株式を取得します。全株式が取得できなかった場合は当初の計画に基づいて対応します。これらのプロセスを通じてTOBは完了し、買収者は新たな経営権を手中に収めることが可能となります。しかし、法的遵守や関係者との緊密な連携が求められるため、慎重な事前準備と戦略が成功の鍵を握ります。リスクとメリットを十分に検討し、戦略的に行動することが重要です。TOBは企業買収の一つの強力な手段であり、適切な計画と準備があれば、経営権の迅速な取得や市場の反対回避といった多くのメリットを享受できます。しかし、その成功には多角的な視点と柔軟な対応が不可欠です。