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- 価値連鎖(バリュー・チェーン)
更新日:2024年09月10日
価値連鎖(バリュー・チェーン)は、企業が製品やサービスを市場に提供する過程で付加価値を創出する一連の活動を分析するための概念です。この手法は、ポーターの競争戦略論(1985年)で広く知られるようになりました。価値連鎖の主な目的は、企業が競争優位を得るための活動やプロセスを特定し、改善することです。その構造は、大きく「主活動」(Primary Activities)と「支援活動」(Support Activities)に分けられます。主活動は製品やサービスの直接的な創造、販売、流通などに関与する主要な業務プロセスで、インバウンド・ロジスティクス(原材料や部品の受け入れ、保管、在庫管理など)、オペレーション(実際の製造や組み立て、生産プロセス)、アウトバウンド・ロジスティクス(製品の配送や出荷、在庫管理)、マーケティングと販売(製品やサービスの顧客認知、販売活動)、サービス(製品販売後のサポート、メンテナンス)に分類されます。支援活動は、会社のインフラ(総務、人事、財務、経営管理など)、人材管理(採用、教育、評価、報酬、人材育成)、技術開発(製品開発やプロセス改善、情報システム導入)、調達(原材料や設備、サービスの外部調達)に分類され、主活動を支援し効率化する役割を担うものです。
価値連鎖分析の主要な目的は、各活動やプロセスがどの程度価値を生み出しているかを評価し、競争優位を強化できる領域を特定することです。この分析によって期待できるメリットには、コスト削減(必要のない活動の削除やプロセス効率化によるコスト削減)、価値創造(顧客にとっての価値を高める活動へのリソース集中)、競争優位の獲得(他社との差別化要因の明確化と持続的な競争優位の築き上げ)、全体的な業績向上(企業全体の活動やプロセス改善による業績向上)が含まれます。価値連鎖の分析を実践するための手法のステップとしては、活動の特定(企業の主活動と支援活動の洗い出し)、コストと価値の測定(各活動にかかるコストと生み出される価値の定量的評価)、競争力の分析(各活動が競合他社と比較した際の競争力の分析)、改善点の特定(改善が必要な領域の特定と具体的な対策の計画・実行)が挙げられます。これに基づき、企業は持続的な成長と競争優位性を確保できます。
具体的な企業での価値連鎖の事例として、製造業とサービス業があります。製造業の例では、自動車メーカーが入荷された部品を効率的に管理するために最新のインベントリシステムを導入し、製造プロセスでのオートメーション技術を駆使して生産効率を最大化。また、ITインフラを強化することでサプライチェーン全体の透明性を向上させることがあります。サービス業の例では、ホテル業界が顧客の予約管理を効率化するためのITシステムを導入し、パーソナライズされたサービスを提供することで顧客満足度を高め、従業員の教育にも力を入れてサービス品質を向上させています。結論として、価値連鎖は、企業の各活動が全体として価値を生み出し、競争優位を築く方法を明確にするツールであり、企業経営者が戦略的な意思決定を行うための重要な指針となります。価値連鎖を効果的に活用することで、企業は持続的な成長と競争優位性を保つことができます。