デルファイ法

更新日:2024年09月10日

デルファイ法の概要と基本的な流れ

デルファイ法(Delphi Method)は、さまざまな分野における専門家の意見を集約する手法で、特に将来予測や不確実性が高い問題に対して有効です。この手法は1940年代末から1950年代初頭にかけて、アメリカのランダムコーポレーションによって開発されました。デルファイ法の基本的な流れは、匿名性を確保した複数回のアンケート調査を通じて、専門家の意見を収集・フィードバックし、逐次的に意見を収束させていくというものです。具体的な手法の背景として、グループ思考(Groupthink)や集団によるバイアスを避け、専門家の独立した意見を元にした詳細な予測や意思決定を行うために開発されました。同時に、集団の知識や洞察力を最大限に活用することを目的としています。デルファイ法の主要な特徴として、匿名性、反復的なプロセス、そして集約された意見があります。匿名性は参加者の意見が権威や序列に左右されず、自由な意見を引き出すことが可能になるという点です。反復的なプロセスとして、アンケートは複数回にわたって行われ、各回の結果は次のラウンドのフィードバックとして提供されます。各ラウンドの結果は統計的な集計や分析を通じてフィードバックされ、意見収束を目指します。

デルファイ法の実施手順と応用例

デルファイ法は、複数のステップを通じて実施されます。まず、問題定義として何を予測するのか、何を決定するのかといった具体的な問題を明確にすることから始まります。次に専門家の選定として、問題に対して専門的な知見を持つ参加者(通常は10人から20人程度)を選びます。次に第1回のアンケートを実施し、この際にはオープンエンド(自由回答形式)にするか、特定の選択肢を提供する形にするかを決めます。その後、フィードバックとして第1回のアンケート結果を集計し、概要や主要な意見をフィードバックします。そして第2回以降のアンケートとして、フィードバックの内容を基に再度アンケートを実施し、このプロセスは数回(通常は2?4回程度)繰り返され、意見の収束やコンセンサスが図られます。最後に最終的な集約と分析として、複数回のアンケート結果を集約し、最終的な結論や予測を導き出します。デルファイ法はさまざまな分野で活用されており、ビジネスでは製品開発やリスク管理に使用され、政策決定では公共政策の立案や災害対策に役立てられます。また技術予測では、技術のトレンド予測や研究開発の方向性の決定に用いられています。

デルファイ法のメリットとデメリットおよび実施上の工夫

デルファイ法にはいくつかのメリットとデメリットが存在します。メリットとしては、意見の多様性を尊重し、集団思考の回避、そして柔軟性が挙げられます。匿名性と反復的なフィードバックにより、多角的な視点が取り入れられ、集団の偏向的な思考を避け、個々の独立した意見を重視できます。また異なるテーマや領域で適用可能であり、複雑な問題にも対応できるという特長もあります。一方でデメリットとしては、時間とコストがかかること、専門家の質に依存すること、そして意見の収束が難しい場合があることが挙げられます。複数回のアンケートとフィードバックプロセスにより時間がかかり、費用も発生しますし、参加者の専門知識の深さと広さが結果に大きく影響するため、専門家の選定が重要です。また参加者の意見が大きく分かれると、コンセンサスが得られにくいこともあります。成功するデルファイ法を実施するためには、明確な問題設定、専門家の適切な選定、効果的なフィードバック、そして参加者のモチベーション維持がポイントとなります。デルファイ法は、専門家の意見を集約・分析することで、不確実性の高い問題に対する洞察を得るための強力なツールです。適切に設計し運用することでその真価を引き出すことが可能となります。