買収・合併 (M&A)

更新日:2024年09月10日

買収・合併(M&A)とは

買収・合併(M&A: Mergers and Acquisitions)は、企業の所有権を移転させるプロセスを指す用語であり、ビジネスの成長や戦略的な目的を達成するために広く利用されます。買収は一方の企業が他方の企業を購入する行為であり、合併は二つ以上の企業が統合して一つの企業になることを意味します。買収には友好的な買収と敵対的な買収の二種類があり、前者は両社の合意のもとで行われるのに対し、後者は買収対象企業の経営陣の意向に反して行われます。合併には吸収合併(Absorption Merger)と新設合併(Consolidation)の形態があります。前者は一方の企業が存続し他方の企業が消滅するもので、後者は全ての参加企業が解散し新たな企業が設立されることを意味します。M&Aには水平型合併、垂直型合併、混合型合併、市場拡大型合併、製品拡大型合併などがあり、それぞれ市場シェアの拡大や新たな市場への進出、製品ラインの拡充など異なる目的があります。水平型合併は同一業界に属する企業同士の合併で市場シェアの拡大を狙い、垂直型合併は供給チェーンの異なる段階にある企業同士の合併で効率性の向上を目指します。一方、混合型合併は異なる業界に属する企業同士の合併で事業の多角化やリスク分散を図り、市場拡大型合併は異なる地域市場に属する企業同士の合併で新たな市場への進出を目指します。製品拡大型合併は補完的な製品やサービスを提供する企業同士の統合で製品ラインの拡充を狙います。

M&Aのプロセス

M&Aのプロセスは複雑で、多岐にわたるステップが含まれます。まず戦略立案の段階でM&Aの目的や目標を明確にし、対象企業の特定基準を設定します。次に市場調査や企業評価を通じて適切な対象企業を選定し、デューデリジェンスを行います。デューデリジェンスでは対象企業の財務状況、法務リスク、業務運営などを詳細に調査し、実態を把握します。この過程で適正価格や統合計画を策定します。成功した場合、価格や条件について相手企業と交渉し契約を締結します。必要な法的手続きや規制当局の承認も得て、次に進みます。その後、合併や買収後の統合計画を策定し、人事、システム、業務プロセスなどの統合を進めます。最終的には統合後の企業運営を効果的に管理し、シナジー効果を最大化するための対応を行います。この段階では文化の統合や従業員のモチベーション管理も重要な要素になります。

M&Aのメリットとデメリット、成功事例と失敗事例

M&Aには多くのメリットがあります。迅速な市場拡大が可能であり、既存の市場や新たな地理的市場に迅速に進出できます。また、コスト削減や収益向上などのシナジー効果も期待できます。さらに、買収対象企業が持つ技術やノウハウを取り込むことで自社のイノベーションを加速させることもできます。競争力の強化もまた一つの大きなメリットで、市場における地位を強化し、競争優位性を高めることが可能です。しかし、M&Aにはリスクやデメリットもあります。異なる企業文化や業務プロセスを持つ企業同士の統合は容易ではなく、結果として統合が失敗することもあります。またデューデリジェンスや契約交渉にかかるコストが高額であることもリスクです。一部のM&Aは独占禁止法などの規制に抵触するリスクや、従業員の不安や抵抗によるモチベーション低下もデメリットです。具体的な成功事例としては、1998年のダイムラー・ベンツとクライスラーの合併や、2012年のフェイスブックとインスタグラムの買収が挙げられます。前者は製品ラインの拡充と市場シェアの拡大に成功し、後者はSNS市場での競争力を強化しました。一方、失敗事例としては2000年のアメリカン・オンライン(AOL)とタイムワーナーの合併や2007年のダイムラー・クライスラーの統合失敗があります。前者は企業価値の大きな減少を招き、期待されたシナジー効果も発揮されませんでした。後者は企業文化の違いや管理上の問題が表面化し、最終的にはダイムラーがクライスラーを売却する結果となりました。適切なM&A戦略と実行が合致すれば、企業に大きな利益と成長機会をもたらすことが可能です。