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更新日:2024年10月10日
クールノー均衡(Cournot equilibrium)とは、フランスの経済学者アントワーヌ・クールノー(Antoine Augustin Cournot)が1838年に発表した著書『富の理論に関する数学的原理』に基づいて導出された概念です。この均衡の特徴は、特に寡占市場(数社が市場で大きなシェアを持つ状況)における企業の行動を説明する点にあります。クールノー均衡はゲーム理論の基本的な構成部分であり、各企業が他の企業の行動を考慮しつつ自己の行動を最適化する様子をモデル化しています。その基本概念が以下に示されています。まず、クールノー均衡は数量競争に基づいており、企業は価格ではなく生産数量を競い合い、その結果として価格が決まります。また、市場に出回る製品は同質的であり、消費者にとって基本的に同じ価値を持つ製品を提供します。そして、企業数が限定的ないくつかの(通常2つ以上の)企業が市場を支配しており、この状況下で各企業の利益は他の企業の生産決定にも依存する相互依存性を持ちます。
次に、クールノー競争モデルとその詳細な構築について説明します。例えば2社(企業Aと企業B)が存在すると仮定します。それぞれの企業は自らの生産量(qAとqB)を選択し、それによって市場価格が決定されます。市場価格Pは全体の生産量Q(Q = qA + qB)に対して需要法則に基づいた逆需要関数として表され、通常Qが増加するとPは減少する形となります。各企業の目標は、自己の利益を最大化することです。企業Aの利益関数は次のように表され、¥[ ¥Pi_A = P(Q) ¥cdot q_A - C_A(q_A) ¥] 企業Aと同様に企業Bも自身の利益関数を持ちます。各企業は他の企業の生産量を観察し、その情報に基づいて自社の最適な生産量を決定します。具体的な数値例を用いて、例えば需要関数が¥[ P(Q) = a - bQ ¥] と与えられ、各企業のコスト関数が¥[ C_A(q_A) = c_A q_A ¥] 、¥[ C_B(q_B) = c_B q_B ¥] と設定されている場合の利益関数は次のように書き直すことができます¥[ ¥Pi_A = (a - b(q_A + q_B)) q_A - c_A q_A ¥]。そして、利益をqAで微分しゼロになる点を探すことで最適な反応関数を導出します。こうして得られた反応関数¥[ q_A = ¥frac{a - c_A - bq_B}{2b} ¥]を用いて、同様に企業Bの最適な反応関数も定義されます。¥[ q_B = ¥frac{a - c_B - bq_A}{2b} ¥]これらの反応関数の交点となる条件を満たす¥((q_A^*, q_B^*)¥)がクールノー均衡となります。
さらにクールノー均衡の特性について解析することで、具体的な数値例を用いた計算により均衡点を直感的に理解できます。例えば、需要関数が与えられ、各企業の利益関数が導出された場合、それを微分して最適な反応関数を見つける手続きの詳細説明は、理解を深める助けとなります。クールノー均衡とナッシュ均衡の関係性は、各プレーヤー(企業)が他のプレーヤーの戦略を所与として自己の戦略を最適化している点で特別なケースであることが分かります。また、経済的効率性の側面から見ると、企業が市場力を持つクールノー均衡では、完全競争市場に比べて生産量が少なく、価格が高騰する傾向があります。このため社会的余剰が最大化されない場合が多く、政策の影響も重要な研究課題となります。たとえば、政府の介入や規制の導入が各企業のコスト構造に影響を及ぼし、結果として新たな均衡点を生み出す可能性があります。クールノー均衡は、寡占市場での企業戦略を理解するための強力なフレームワークを提供し、企業間の競争ダイナミクスや市場結果への影響を深く探ることに貢献します。また、経済政策の設計や市場構造の分析などにおける洞察を提供し、現実の経済問題に対する包括的な理解を助けるものです。このようにして、クールノー均衡は現代の経済学において重要な位置を占めているのです。