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- リアルビジネスサイクル理論
更新日:2024年10月10日
リアルビジネスサイクル(Real Business Cycle, RBC)理論は、経済の景気循環を主に実質的な(リアル)ショックによって説明する経済理論です。1980年代にエドワード・プレスコットとフィン・キッドランドがこの理論を発展させ、大きな影響を与えました。RBC理論の基本的な前提は、経済の変動は主に労働の供給や生産技術といった実質的な要因によって引き起こされるというものです。具体的には技術進歩や資源の発見などの技術ショックが主な原因となり、生産性の変動が経済の成長率や労働市場に直接影響を与えます。また、市場は完全競争の状態にあり、価格は常に需要と供給によって調整されると考えます。さらに、経済主体(消費者や企業)は合理的であり、将来の経済状況について正確に予測する能力があると仮定されます。最後に、資源は常に最適に配分されていると考えられ、無駄や非効率がないとされます。
RBC理論において、技術ショックなどの外部ショックがどのように経済に影響を与え、景気循環が生じるかを説明します。例えば、技術進歩があると生産性が向上し、企業はより多くの生産を行います。これにより、労働需要が増加し、賃金が上昇します。結果として、消費や投資も増加し、経済全体が活性化します。逆に、技術の進歩が停滞する場合、生産性が低下し、企業の生産活動も縮小します。これにより労働需要が減少し、賃金も下落するため、消費や投資が抑制され、経済が不況状態に陥ることになります。ここで強調されるポイントは、技術ショックやその他の実質的なショックが労働市場や生産活動に直接的な影響を与え、それが結果的に経済全体の景気循環に反映するという点です。またRBC理論では、こうしたショックが繰り返し発生することによって、経済の活発な高揚期と抑圧された後退期が交互に訪れるという見解が示されています。
RCB理論にはいくつかの批判や限界が存在します。まず、現実の市場は完全競争ではなく、不完全性(例:摩擦や独占など)が存在します。また、需要側のショック(例:消費者信頼、政府政策など)が無視されることが多く、経済の実態と乖離していると指摘されています。さらに、価格の硬直性という問題も存在します。実際の経済では価格や賃金が硬直的であり、すぐに調整されるわけではありません。このため、RBC理論が描くようなスムーズな市場調整は現実には起こり得ないと言われています。しかし、RBC理論は技術進歩や生産性の変動が経済の景気循環に与える影響を理解する上で重要な視点を提供します。こうした理解は、他の景気循環理論と組み合わせることで、より全体的な経済理解が可能になるでしょう。そのため、RBC理論は単に批判されるだけでなく、他の理論との相互補完的な関係で活用されるべきです。