リカードの等価定理 (中立命題) 利潤

更新日:2024年10月10日

リカードの等価定理の基本概念

リカードの等価定理(Ricardian Equivalence)は、経済学における財政政策関連の概念で、政府が増税するか新たな公債を発行して支出を賄うかの選択が、経済全体に対して中立であり、いずれの方法も経済に対する効果に違いがないとする主張です。言い換えれば、政府が支出増を税金で賄うか、借金で賄うかは、長期的には経済に対する影響が同じだというものです。この背後には、政府の借金が将来の増税を意味し、理性的な個人が将来の増税を予見して現時点での消費を控え貯蓄を増やすことで、結果的に経済の均衡が維持されるというロジックがあります。デビッド・リカード(David Ricardo)の名前にちなんでいますが、実際にはロバート・バロー (Robert J. Barro) によって形式化され、リカード・バロー仮説とも呼ばれます。

個人の消費・貯蓄行動と政府の財政政策

この理論によれば、政府の借金が将来の増税を伴うため、理性的な個人はその増税に備えて現在の消費を控え、貯蓄を増やすと仮定します。この消費抑制が、借金による支出拡大を中和し、全体の経済活動に対する影響を無効化することになります。つまり、政府の借金による支出は、将来の増税を予見した個人の貯蓄行動によって相殺されるため、経済全体の支出に中立的であると理論付けられています。特に、個々の経済主体が将来の税負担を正確に予見し、それに基づいて合理的な行動を取ると仮定することで、この理論は成立しています。また、この理論は政府の財政政策が直接的に個人の経済行動に影響を与えることを示しています。

現実の経済と理論の適用限界

しかし、リカードの等価定理が理論的に一貫している一方で、実際の経済ではこの理論通りにいくことは少ないと言えます。市場の不完全性や個々の企業の反応、そして個人が必ずしも理性的に行動しない場合が多いからです。このため、リカードの等価定理が示すように政府の借金や増税が経済全体の支出に対して中立であるとは限らず、短期的には企業の利潤に影響する可能性があります。また、政治的要因や経済政策の変動によっても、この理論の適用は困難になる場合があります。従って、多くの経済学者がこの理論の有効性について議論し続けています。リカードの等価定理は、一つの理論的視点として理解されるべきであり、現実の経済政策においては他の要因とのバランスを取る必要があります。