CSMA/CD

更新日:2024年10月20日

安定したデータ通信技術: CSMA/CD

CSMA/CD(Carrier Sense Multiple Access with Collision Detection、搬送波感知多重アクセス/衝突検出)は、イーサネットネットワークで使用されるデータリンク層のプロトコルであり、多数の端末が同じ通信路を共有するネットワーク環境でデータパケットの衝突を管理し、効率的な通信を可能にします。CSMA/CDの仕組みは、まず搬送波感知でデバイスが通信路を感知し、他のデバイスが現在データを送信しているかを確認します。次に、多重アクセスで複数のデバイスが通信路を共有し、通信路が空いていると判断した場合にデータを送信します。最後に衝突検出では、データが送信された際に同時に他のデバイスもデータを送信し、衝突が発生した場合にデバイスは衝突を検出し、データ送信を一旦中止してランダムな時間だけ待ち再度送信を試みます。このプロセスにより、衝突を効率的に管理し、通信の円滑化を図ります。

CSMA/CDの歴史と技術的進化

CSMA/CDの原理は1970年代にゼロックスのパロアルト研究所(PARC)によって開発され、イーサネットの規格としてIEEE 802.3に標準化されました。以降、1980年代から1990年代にかけて、多くのビジネス環境や家庭内ネットワークで広く使用されてきました。データはフレームと呼ばれる形式で送信され、送信元と宛先のMACアドレス、データフィールド、エラー検出のためのフレームチェックシーケンス(FCS)が含まれます。衝突が検出されると、デバイスはジャミング信号を送信して他のデバイスに知らせ、エクスポネンシャルバックオフアルゴリズムに基づきランダムな時間だけ待ち再送信を試みます。この方法により、再び衝突の発生を防ぎます。CSMA/CDはそのシンプルさとコスト効率の良さから多くの利点がありましたが、ネットワークのトラフィックが増加するにつれて衝突が頻発し、性能の低下や帯域幅の制限、大規模ネットワークへの不向きなども課題として挙げられます。

進化する通信技術とCSMA/CDの現代的意義

現代の高速イーサネット(ギガビットイーサネット、10ギガビットイーサネット)では、CSMA/CDはほとんど使用されなくなっています。それでも、CSMA/CDの基本概念とその成果はネットワーク通信の基礎として重要です。CSMA/CDは、Wi-Fiネットワークで使用されるCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)とは異なり、直接衝突を検出するプロトコルであるのに対し、CSMA/CAは衝突を回避する追加手段が取られます。また、トークンリングは送信権を持つ「トークン」を使って衝突を排除する方法ですが、実装が複雑になる点が異なります。CSMA/CDはそのシンプルさと効率性から、家庭や中小企業のネットワーク環境でその価値を発揮しましたが、ネットワークが大規模化し、高速化する現代においては、より先進的な技術が必要とされています。それでもCSMA/CDの基本概念はネットワーク設計と運用の基礎として現在でも重要な役割を果たしています。