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更新日:2024年10月20日
IDEF(Integration DEFinition for Function Modeling)は、ビジネスプロセスのモデリング、データの構造化、システム設計などに用いられる一連の手法の総称です。IDEF手法は、1970年代から1980年代にかけてアメリカ国防総省(DoD)の需要に応える形で開発されました。主に複雑なシステムの理解、設計、管理を目的としており、その適用範囲は広範囲にわたります。今回は、IDEFの主な手法、特にビジネスと経営情報システムにおける代表的なIDEF0とIDEF1Xを中心に解説します。IDEF0は機能モデリングのための手法であり、システムのプロセスや機能を階層的に表現するのに用いられます。IDEF0は、アクティビティ、入力(Input)、出力(Output)、制御(Control)、メカニズム(Mechanism)という4つの基本要素を用います。これらを組み合わせて機能ブロックを定義し、その相互関係を示します。アクティビティはシステムまたはプロセスの具体的な作業や機能を示し、入力はアクティビティの実行に必要な情報や物質、出力はアクティビティの結果として得られる情報や物質、制御はアクティビティの実行条件や制約条件、メカニズムはアクティビティを実行するためのリソースやツールを表します。IDEF0のモデルは、矩形の「ボックス」とそれをつなぐ「矢印」によって構成され、ボックスはアクティビティを示し、矢印は入力、出力、制御、メカニズムを示します。ボックスの左側が入力、右側が出力、上部が制御、下部がメカニズムの位置となります。これにより、どの情報がどのプロセスによって処理され、どのような結果を生むのかが直感的に理解できるようになります。IDEF0の利点として、階層的な構造による複雑なシステムの理解、一定のルールに基づいた標準化、視覚化による分析と改善が挙げられます。
IDEF1Xは、データモデリングのための手法であり、特に関係データベースの設計に適しています。データの構造を視覚的に表現し、業務要件に基づいたデータベースの設計を支援します。IDEF1Xは、表の設計だけでなく、データの正規化やビジネスルールの定義もサポートします。エンティティは具体的なデータの集合を表すもので、データベースのテーブルに相当し、属性はエンティティの特性を示すフィールドやカラムに相当、リレーションシップはエンティティ間の関連性を示し、キーはエンティティ内のユニークな識別子で主キー(Primary Key)や外部キー(Foreign Key)を含みます。IDEF1Xのモデルは、矩形の「ボックス」でエンティティを示し、内部に属性を列挙します。それぞれのエンティティ間のリレーションシップは、ラインや矢印で表し、関係の種類(1対多、多対多など)も示します。IDEF1Xの利点として、エンティティとその属性を明確に定義することでデータの明確化、一貫性のあるシステムの構築による統一性、正規化やビジネスルールの定義によるデータ整合性の保持が挙げられます。IDEF0とIDEF1Xが代表的ですが、IDEFには他にも多くの手法が存在します。例えば、IDEF2はシミュレーションモデルの定義手法、IDEF3はプロセスフローのキャプチャ(記録)に特化した手法、IDEF4はオブジェクト指向の設計と定義のための手法、IDEF5はオントロジーの開発と定義に特化した手法です。
ビジネスプロセスの再設計(BPR)において、ビジネスプロセスの効率化や改善を図るために、IDEF0を用いて現行プロセスの視覚化と分析を行い、問題点を特定します。その上で、改善案を提案し、新しいプロセスモデルを作成します。また、IDEF1Xは企業の主要な業務データを整理し、効率的で整合性のあるデータベース設計に役立ちます。新システムの設計や既存システムの改善に用いることができます。さらに、複数の情報システムやアプリケーションを統合する際に、IDEF0を用いてシステム間のインターフェースやデータフローを明確にし、統合プロセスをスムーズに行います。結論として、IDEFは複雑なシステムやプロセスを明確にし、設計と管理を効率化するための非常に強力なツールです。特に、IDEF0とIDEF1Xはビジネスプロセスモデリングとデータモデリングの分野で広く利用されており、標準化された手法と図式により、関係者間のコミュニケーションが容易になります。システムの改善や再設計がスムーズに進むため、企業はより効率的で効果的な情報システムを構築し、運用できるようになります。