CE(Concurrent Engineering)

更新日:2024年11月10日

同時進行工学の基本概念と歴史

CE(Concurrent Engineering)、日本語で「同時進行工学」や「並行開発」とも呼ばれ、現代のビジネスや生産管理で非常に重要な概念です。この手法は、製品のライフサイクル全体を通じて、機能横断型チームを形成し、並行して複数の業務を進行させるアプローチを指します。目的は、製品開発のリードタイムを短縮し、品質を向上させ、コストを削減することです。具体的には、設計、製造、検査、物流、そしてサービスまでの各プロセスが密接に連携し、リアルタイムで情報を共有することで実現されます。CEの基本理念には並行性、協力とコミュニケーション、ライフサイクル思考、統合システムがあります。CEの概念は1980年代に米国の国防総省で広まりました。当時、複雑化する兵器システムの設計・製造プロセスを改善するための方法として導入され、軍事から民間の様々な産業に広がりました。特に製造業、自動車産業、航空宇宙産業などで大きな効果を上げ、現在ではIT、医療機器、消費財など多くの分野で応用されています。

CEの実施方法と組織構造

CEを実施するための基本的なステップは準備段階、設計段階、製造段階、検査・承認、市場投入・フィードバックの5つに分かれます。準備段階では組織内の文化変革と教育、機能横断型チームの編成、プロジェクト管理ツールや情報システムの整備が行われ、設計段階では各部門が同時並行で設計・開発を行い、プロトタイプの共同開発とテストが行われます。製造段階では製造工程の最適化と柔軟性の確保、品質管理の強化が行われ、検査・承認段階では早期に製品検査を行い、問題点を迅速に発見・対応します。市場投入後のフィードバック収集と次回製品の改善も重要です。これに加え、CEを効果的に実施するためには、従来の縦割り組織を超えたマトリックス型の組織構造が求められます。各部門(設計、製造、品質、マーケティングなど)がそれぞれの専門知識を持ち寄り、一つのプロジェクトに対して協力しながら動く形です。

CEの利点、課題と成功事例

CEの利点には開発期間の短縮、コスト削減、品質向上、競争力の強化があります。各工程を並行して進めることで、全体のリードタイムが大幅に短縮され、設計変更や改善プロセスの早期発見により、無駄なコストを削減できます。また、各部門が協力して初期段階から問題を特定し、改善することで品質も向上し、製品の市場投入が早くなるため、競争力も強化されます。しかし、CEにはコミュニケーションの複雑化や初期費用の増加、文化の変革、リソース管理などの課題も存在します。例えば、機能横断型チームの中での情報共有やコミュニケーションが複雑になる可能性があり、情報システムの整備やチームの教育にかかる初期費用が高いことが挙げられます。また、従来の組織文化や業務プロセスを変えることは容易ではなく、各部門からのリソース配分が適切に行われる必要があります。成功事例として、トヨタ自動車は品質管理と生産効率の向上を目的に、CEの理念を取り入れた「トヨタ生産方式(TPS)」を展開し、設計から製造までの全工程が連携し、無駄を排除することでリードタイムやコストを大幅に削減しています。ボーイングは新型旅客機の開発にCEを導入し、各部門が初期段階から協力して設計・製造を行い、結果として開発期間を短縮し、品質向上にも繋がっています。フォードも同様に、CEを用いて新車の開発プロセスを効率化し、各部門の連携を強化することで、設計変更の早期対応や品質問題の早期発見に成功しました。結論として、CEは現代のビジネス・生産管理において非常に効果的なアプローチであり、成功事例からも分かるように、正しく実施すれば大きな成果を上げることが可能です。今後も多くの企業がCEを取り入れ、その恩恵を最大限に活用していくことが期待されます。