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更新日:2024年11月20日
戦略的利益モデル(Strategic Profit Model, SPM)は、企業の財務パフォーマンスを評価・分析するためのツールであり、その目的は経営戦略がどのように利益に影響を与えるかを明らかにすることです。このモデルは主にデュポン分析(Dupont Analysis)とも呼ばれる手法を用います。デュポン分析は、企業の収益性を3つの主要構成要素に分解することによって、ROE(Return on Equity)やROA(Return on Assets)などの財務比率を詳しく解析する手法です。純利益率(Net Profit Margin)は収益性の指標であり、売上高に対する純利益の割合を示します。計算式は純利益を売上高で割ったもの。総資産回転率(Total Asset Turnover)は効率性の指標で、どれだけの売上を資産で生み出すことができるかを示します。計算式は売上高を総資産で割ったものです。そして、財務レバレッジ(Financial Leverage)は資本構造の指標であり、自己資本に対する総資産の比率を示します。計算式は総資産を株主資本で割ったものです。デュポン分析モデルはこれらの要素を掛け合わせることで表現され、ROEの計算式は「ROE = 純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ」となり、ROAは「ROA = 純利益率 × 総資産回転率」となります。
戦略的利益モデルの主なメリットには、まず「細分化した分析」があります。企業の財務パフォーマンスに影響を与えている特定の要因を詳細に解析することが可能です。このため、具体的な問題点を特定し、それに基づいた改善策を講じることができます。たとえば、純利益率の低下が原因であれば、コスト削減策や価格戦略の見直しが必要となります。また、このモデルは「比較可能性」が高いという特徴もあります。業界内の他社と比較する際に有用であり、自社の財務パフォーマンスがどの位置にあるかを把握することができます。さらに、「アクションプランの策定」に役立ちます。具体的な問題点を発見した後、それに基づいた改善策を導入することで、企業の業績向上が期待できます。
一方、戦略的利益モデルにはいくつかのデメリットも存在します。まず、「一面的な視点」が挙げられます。財務指標だけに焦点を当てているため、顧客満足度や従業員の士気などの非財務指標を考慮に入れないことがあります。これにより、企業の全体的な健康状態を見逃す危険性があります。また、もうひとつのデメリットは「過度な単純化」です。複雑なビジネス環境を単純なモデルで表現するため、重要な要素を見逃す可能性があります。このため、戦略的利益モデルを利用する際には、こうした長所・短所を理解した上で活用することが重要です。具体的な状況に応じて、他の分析ツールや指標と併用することで、より具体的かつ全体的な経営戦略の構築が可能とされています。