OTB(Open-To-Buy)

更新日:2024年11月20日

OTB(Open-To-Buy)とその概念

OTB(Open-To-Buy)は小売業における在庫管理および予算管理の重要なツールであり、特にファッション業界や季節商品を扱う業態で広く活用されています。これは「購入可能な金額」や「仕入れ予算」とも呼ばれ、売上予測や在庫状況を基に効率的な仕入れを計画・実行するための指標です。OTBは特定の期間内(通常は月単位や季節ごと)における仕入れの予算を指し、その概念により過剰在庫や欠品を防ぐ計画が立てられ、キャッシュフローの管理が容易になります。OTBは在庫回転率や顧客需要を考慮しつつ、最適な仕入れ量と最適な仕入れ時期を見極めるためのツールです。OTBの計算方法は基本的に次の数式で行われます。「OTB = 計画販売額 - (期首在庫 + 発注済み商品額) + 期末在庫目標」です。計画販売額は設定された販売目標額、期首在庫は期間の開始時点での在庫額、発注済み商品額は既に発注済みでまだ入荷していない商品の総額、期末在庫目標は期間の終了時点で目指す在庫額を指します。この数式を元に月別の仕入れ量を計画し、販売チャンスを逃さない在庫・仕入管理が可能になります。

OTBの具体的な応用例とメリット

具体的な応用例として、例えばファッション小売店や食料品店があります。ファッション小売店では、春夏物や秋冬物といった季節ごとの商品の仕入れ時期や量の計画にOTBを利用することで、季節外れの商品が売れ残るリスクを減少させ、週次や月次の在庫管理も容易になります。売上動向に応じて仕入れ量を調整し、販売促進やセールのタイミングを最適化することが可能です。例えば夏に人気アイテムが予想以上に早く売れた場合、追加発注のタイミングを迅速に判断できます。食料品店では、クリスマスシーズンの特定商品(ケーキや特別メニュー)や季節限定の食材(冬季の鍋用食材など)を計画的に仕入れるためにOTBを利用します。OTBのメリットには、資金管理の効率化、在庫回転率の向上、販売機会の最大化があります。各期間の仕入れ予算を明確にすることでキャッシュフローの管理が容易になり、不必要な在庫増加による資金のロックアップを防ぎ、事業運営を円滑にします。また、適正な在庫量を維持することで在庫回転率が向上し、商品の鮮度を維持できます。特にファッションや季節商品などのトレンドに敏感な業界では重要な要素です。顧客需要に柔軟に対応することができ、適時適量の仕入れにより欠品リスクを減らし、顧客満足度を向上させます。

OTBの課題と導入のポイント

一方でOTBには課題も存在します。まず、売上予測や需要予測の精度がOTBの成否に直結しますが、予測が難しく誤った予測に基づくOTBが逆効果となることがあります。また、市場トレンドや消費者嗜好の変化、経済環境の変動などの外部要因が仕入れ計画に影響を与え、予測が外れた場合には在庫過多や在庫不足のリスクがあります。さらに高精度な予測や計画を行うためには、過去の販売データや在庫データ、顧客データなどの豊富なデータが必要で、専用のシステムや高度な分析スキルも求められます。OTBを導入する際のポイントとしては、精度の高い売上・需要予測、柔軟な仕入れ調整、適切なITツールの導入、トレーニングと教育が挙げられます。データ解析を駆使し高精度な売上予測を行い、顧客フィードバックや市場動向、新商品の反応をリアルタイムで反映させる必要があります。専用の仕入れ管理ソフトウェアや在庫管理システムを導入することで、計画立案やデータ管理が容易となり、効果的なOTB管理が可能です。企業内でのOTBの理解とその重要性を全員に教育し、適切なトレーニングを行うことも不可欠です。全体としてOTBは在庫および仕入れ計画において非常に重要なツールであり、小売業における在庫管理の効率化や販売機会の最大化に貢献します。その実践には高精度な予測と柔軟な調整、適切なツールの利用が不可欠であり、効果的に導入し運用するためにはデータ活用のスキルやシステムの導入、日常的な業務への適用と改善プロセスが求められます。