DIPファイナンス

更新日:2024年12月01日

定義と概要・法的背景

DIPファイナンス(Debtor-in-Possession Finance)とは、企業が破産手続きを進めながら事業運営を継続するために調達する資金のことです。特に、アメリカの連邦破産法第11章(Chapter 11 Bankruptcy)に基づく再生手続きにおいて広く利用されます。企業がChapter 11申請を行うと、破産裁判所の監視下で事業を続けることが認められ、既存の債務負担が一時的に凍結され、新たな経済的自由を享受します。この状況下で、DIPファイナンスは事業継続のための資金を調達する重要なツールとなります。裁判所の認可を得た上で行われるため、DIP融資は他の債権に優先される「スーパー優先債権」として位置づけられます。

目的とメリット・調達方法と条件

DIPファイナンスの目的には、運転資金の調達、信用の確保、再編計画の実行、利害関係者の安心感があります。日常の事業運営を支えるための運転資金、供給業者や取引先に対する信用の維持、再編計画の推進、そして従業員や顧客、投資家に対する安心感を提供します。DIPファイナンスは通常、大手金融機関や投資家から調達されますが、その条件は厳しいものが多いです。高金利が設定されることが多く、企業の資産を担保にすることも求められます。また、破産裁判所の認可が必要であり、厳格な管理と透明性が求められて定期的な報告が必要です。

日本の状況・リスクと課題・事例・結論

日本でも、アメリカのChapter 11と似た手続きとして民事再生法が存在し、DIPファイナンスが認識されていますが、アメリカほど一般的ではありません。近年、日本の市場でもその重要性が認識され始め、金融機関の提供する再生支援の一環として利用されています。DIPファイナンスには高金利負担や法的手続きの複雑さ、再生計画の失敗リスク、信用の維持の難しさなどのリスクと課題が存在します。しかし、多数の事例でその有用性が確認されています。例えば、米国の大手航空会社ユナイテッド航空が2002年に連邦破産法第11章を適用し、DIPファイナンスを通じて必要な運転資金を調達し、経営再建に成功しました。結論として、DIPファイナンスは、困難な状況にある企業が再建を目指すための強力なツールです。高金利や法的手続きの複雑さといった課題があるものの、適切に活用されれば企業の再生を支援する大きな力となります。中小企業においてはその柔軟性と迅速性が評価されており、今後の日本市場でもさらなる浸透が期待されます。DIPファイナンスを理解し、適切に利用することで、多くの企業が新たなスタートを切る機会を得ることができるでしょう。