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- 株式公開買付制度(TOB)
更新日:2024年12月01日
株式公開買付制度、英文でTender Offer Bid、略してTOBは、企業が他の企業の株式を市場外で直接株主から買い取る手法です。日本をはじめ世界各国で利用され、企業が過半数以上の株式を獲得することで、経営権を取得することを目的とすることが多いです。TOBの意義と目的について具体的に説明します。TOBの主な目的は、経営権の取得です。企業は大量の株式を購入し、透明性と効率性を確保しながら経営権を取得します。また、企業再編や合併、買収(M&A)の手法としても用いられます。これにより、新しいビジネスシナジーを創出します。資本提携を強化する手段としても利用され、株主価値の向上を目指して株式の一部を市場から買い取ることで株価の上昇を期待します。企業が公開買付を行うことで、株価が上がることもあります。このように、TOBは多様な目的に利用されるため、企業にとって重要な戦略となります。
TOBにはいくつかのステップが存在します。まず事前準備として、買収対象企業の財務状況、事業内容、市場ポジションなどを分析し、買収の目的と具体的な戦略を策定します。次に、TOBを実行するための資金を確保します。内部留保や外部からの調達が考えられます。その後、買収者は公開買付を開始する旨を公告し、買付価格と買付期間、買付株式数、買付の目的と戦略を明示します。対象企業の株主は提示された条件に基づき株式を売却するかを決定し、買収者は応募を受け付けその内容を管理します。応募期間終了後、条件を満たす株式の買付を実行し、支払いを行い名義を移転します。また、TOBは複雑な取引であり、様々な法律と規制が絡んでいます。日本では金融商品取引法がTOBに関する法規制を提供し、一定数以上の株式を買い付ける場合、事前に金融庁への届出および公表する義務があります。買付期間は原則20営業日以上、上限は60営業日と定められ、公正な価格での買付が求められます。アメリカではウィリアムズ法(Williams Act)があり、透明性と公正性を保つための規制が設けられています。ヨーロッパ各国でも同様の規制が整備されており、TOBは各国間で異なる規制の下で行われます。これらの規制はTOBの有効性を担保し、透明性と公正性を確保します。
TOBにはメリットとデメリットが存在します。メリットとしては、迅速な買収が可能です。市場を通じた買収と比較して短期間で大量の株式を取得できます。また、公開された情報に基づく取引で透明性が高いことも評価されます。他の買収希望者が現れた場合、競争が生じ最終的な買付価格が上昇し、株主にとって有利な条件が引き出されやすくなります。しかし、高コストがかかることや株主が必ずしも応募するとは限らない失敗リスク、敵対的買収として受け取られ対象企業の経営陣や従業員からの反発リスクも存在します。TOBの実際の事例として、ソフトバンクによるスプリントの買収があります。2013年、ソフトバンクはアメリカの通信会社スプリントの株式を大量に買付け、経営権を取得しました。この取引は日本企業による大規模な海外買収事例として注目されました。また、日本郵政によるかんぽ生命の完全子会社化もあります。2021年、日本郵政は子会社であるかんぽ生命の株式を公開買付けし、完全子会社化を目指しました。まとめとして、株式公開買付制度(TOB)は企業が他企業の株式を大量に市場外で取得するための重要な手段であり、企業買収、経営権取得、資本提携、株主価値向上など多岐にわたる目的で利用されます。規制の厳しい法的枠組みの下、透明性と公正性を保ちつつ進行し、大小様々な企業取引で有効性を証明し続けています。現代のビジネス戦略においてTOBは重要な手法の一つです。