キャプティブ価格政策

更新日:2024年09月10日

キャプティブ価格政策の基本概念とその事例

キャプティブ価格政策(キャプティブプライシング、Captive Pricing)は、ビジネス・マーケティングの分野において、特定の商品やサービスにおいて補完的な製品やサービスを一体的に販売する際に用いられる価格設定の戦略です。この戦略では、ユーザーが主となる製品を購入した後、それを使用するために必要となる補完的な製品やサービスの価格を、主となる製品の販売とは異なる形で設定し、利益を最大化することが目的となります。キャプティブ価格政策の基本的な考え方は、顧客が主となる製品を購入した段階で、その製品の使い勝手や価値を高めるために必要となる補完的な製品やサービスを継続的に購入しなければならない状況を作り出すことです。このような状況を「キャプティブ」(Captive、捕虜の意)と呼ぶのは、顧客が一度主製品を購入すると、それに付随する追加購入が避けられない状態になるからです。キャプティブ価格政策はさまざまな業界で見られます。たとえば、プリンタとインクカートリッジの組み合わせがよく知られており、プリンタ自体は比較的安価に販売されていることが多いですが、インクカートリッジは高価です。この戦略により、プリンタを購入した顧客は、インクカートリッジを定期的に購入する必要があり、長期的には補完的な製品の価格によって利益が得られる仕組みになっています。また、カミソリと替刃のセットもキャプティブ価格政策の成功例です。初回のカミソリ本体は低価格または無料に近い価格で提供されますが、替刃の価格が高く設定されています。これにより、一度カミソリを使用し始めた顧客は継続して替刃を購入する必要があるため、企業は長期的な収益を見込むことができます。家庭用ゲーム機(例えば、PlayStationやXboxなど)の市場でも、この戦略が広く用いられています。ゲーム機本体は初回に大幅な値引きがされることが多いですが、ゲームソフトやダウンロードコンテンツ(DLC)は高額で販売されます。顧客がゲーム機を購入すると、それに依存する形で追加のゲームやコンテンツも購入することになります。

キャプティブ価格政策の利点

キャプティブ価格政策にはいくつかの利点があります。第一に、初期導入障壁の低減が挙げられます。主製品を低価格で提供することで、初期の導入障壁を低減し、市場への参入を容易にします。これにより、顧客ベースを迅速に拡大することができます。第二に、長期的な収益確保が期待できます。高価格の補完的製品やサービスを継続的に販売することで、長期的な収益確保が見込めます。これにより、企業は安定した収益基盤を築くことができます。第三に、顧客ロイヤルティの向上が見込まれます。一度主製品を購入した顧客は、関連する補完的製品を買い続ける可能性が高いため、顧客ロイヤルティが向上します。顧客が同じブランドの製品やサービスを継続して利用することで、企業のブランド価値も向上します。最後に、マーケットシェアの拡大が可能です。初期価格が低いことで、多くの消費者が製品を試す可能性が高くなります。これにより、市場シェアを迅速に拡大することが可能です。

キャプティブ価格政策の欠点と結論

一方で、キャプティブ価格政策にはいくつかの課題やリスクもあります。まず、消費者の反発が挙げられます。補完的製品やサービスの価格が過度に高騰すると、顧客の反発を招く可能性があります。顧客は価格設定に対して不満を感じる可能性があり、結果としてブランドの評判を損なうことがあります。次に、市場競争の激化が懸念されます。補完的な製品やサービスに依存するキャプティブ価格政策は、競争相手が参入するリスクがあります。競合他社がより低価格で補完的製品を提供する場合、自社のマーケットシェアが減少する可能性があります。さらに、依存度の高いビジネスモデルという点も問題です。主製品と補完的製品の価格設定に依存するため、特定の製品やサービスが市場から撤退した場合に企業全体が大きな打撃を受ける可能性があります。最後に、法的および規制リスクが存在します。特定の国や地域においては、キャプティブ価格政策が独占的または反競争的なビジネス慣行と見なされ、法的な問題を引き起こす可能性があります。これにより、罰金や規制の変更に直面するリスクがあります。結論として、キャプティブ価格政策は、多くの企業が利益を最大化し、顧客ベースと市場シェアを拡大するために利用している強力な価格設定戦略です。ただし、この戦略を成功させるためには、顧客の意識と市場の競争状況を慎重に評価し、バランスの取れた価格設定を行うことが重要です。利点と欠点をよく理解し、それに基づいて戦略を適用することで、長期的な成功を収めることが可能です。