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- LM曲線
更新日:2024年09月10日
LM曲線は、マクロ経済学の代表的なモデルであるIS-LMモデルの重要な構成要素の一つです。IS-LMモデルは、ジョン・ヒックスによって1937年に提案され、ジョン・メイナード・ケインズの理論を具体的に図示・分析するためのツールとして広く利用されています。IS曲線が財市場の均衡を表すのに対して、LM曲線は貨幣市場の均衡を示します。具体的には、LM曲線は利子率(r)と国民所得(Y)の関係を描写し、これらが貨幣市場の均衡を維持するための条件となります。LM曲線の「L」は流動性偏好(Liquidity Preference)、そして「M」は貨幣供給(Money Supply)を意味します。これらを組み合わせてLM曲線が形成されます。ケインズは、人々の貨幣需要が利子率に依存し、流動性の選好によって3つの動機に基づいて取り決められるとしました。取引動機、予備動機、および投機動機です。取引動機と予備動機は所得(Y)に依存し、人々が日常的な取引や予備的な必要のために保持する貨幣の額を決定します。一方、投機動機は利子率(r)に依存し、利子率が高いと債券の保有が有利になり、貨幣の保有を減少させます。一国の貨幣供給量は主に中央銀行の政策によって決定されます。これは図示の際、垂直な線(M)として表されます。
LM曲線は、貨幣市場が均衡するための条件として描かれます。この均衡の条件は、貨幣需要(L)が貨幣供給(M)に等しいことを意味します。数式で表すと以下のようになります:¥[ M / P = L(Y, r) ¥]ここで、Mは名目貨幣供給量、Pは物価水準、Yは実質国民所得、rは利子率、Lは貨幣需要関数です。貨幣需要関数L(Y, r)は、Yとrの関数として表され、Yについては正の相関(所得が増えると貨幣需要が増える)、rについては負の相関(利子率が低くなると貨幣需要が増える)があります。この均衡条件を整理すると、実質貨幣供給(M/P)が実質貨幣需要L(Y, r)に等しいという形で描かれることになります。この均衡条件を利子率(r)と所得(Y)の関係として描写したものがLM曲線です。LM曲線は、貨幣供給や貨幣需要の変動に応じてシフトします。中央銀行が金融政策を変更し、貨幣供給量が増減すると、LM曲線がシフトします。具体的には、貨幣供給が増加するとLM曲線は右にシフトし、貨幣供給が減少すると左にシフトします。経済状況の変動や流動性選好の変化によって、貨幣需要も変動します。例えば、金融市場の不透明感が増し、安全資産への需要が増えると、貨幣需要が増加し、LM曲線が左にシフトします。さらに、LM曲線の傾きは、貨幣需要の利子率弾力性と所得弾力性に依存します。もし貨幣需要が利子率に非常に敏感である場合、LM曲線は非常にフラットになります。一方で、貨幣需要が利子率に敏感でない場合、LM曲線は急峻になります。
IS曲線とLM曲線を組み合わせることにより、財市場と貨幣市場の同時均衡を分析することができます。IS曲線は財市場の均衡条件(投資と貯蓄の均衡)を示し、LM曲線は貨幣市場の均衡条件を示します。IS曲線とLM曲線の交点は、財市場と貨幣市場が同時に均衡している点を示します。この点においてのみ、利子率と所得の組み合わせが両市場の均衡条件を満たします。経済政策の効果を解析する際に、IS-LMモデルは有力なツールとなります。たとえば、貨幣供給が増加すると、LM曲線が右にシフトし、結果として利子率が低下し、所得が増加します。財政政策に関しても、政府支出の増加はIS曲線を右にシフトさせ、所得を増加させる効果を持ちます。LM曲線は、IS-LMモデルの重要な部分として、貨幣市場の均衡条件を利子率と国民所得の関係として描写します。この曲線は、貨幣需要と貨幣供給のバランスによって決まり、そのシフトは金融政策や経済状況の変化に応じて変動します。IS-LMモデルにおけるLM曲線は、財市場と貨幣市場の共同均衡を理解し、経済政策の効果を予測するための基盤となるものです。