マンデル=フレミングモデル

更新日:2024年10月10日

マンデル=フレミングモデルの概要

マンデル=フレミングモデル(Mundell-Fleming Model)は、経済開放下におけるマクロ経済政策の効果を理解するための理論モデルです。このモデルは、国際経済の動向を分析するために、固定為替相場制および変動為替相場制の下での財政政策と金融政策の効果を評価します。1960年代にロバート・マンデル(Robert Mundell)とマーカス・フレミング(Marcus Fleming)によって独立して開発されました。このモデルは、IS-LMモデルを国際的なコンテキストで拡張したものと捉えることができます。まずこのモデルの基本的な前提条件として、経済が小国であり国際市場に影響を与えないこと、固定または変動為替相場制のいずれかで分析を行うこと、完全雇用を仮定すること、長期の価格調整を行う購買力平価説、そして完全に開放された資本市場を想定することが挙げられます。モデルは、国内経済活動を示すIS曲線、貨幣市場の均衡を表すLM曲線、そして国際収支の均衡を示すBP曲線の3つの要素から構成されます。IS曲線は国内総生産(GDP)と利子率の関係を示し、LM曲線はマネーサプライと貨幣需要の均衡を利子率と経済全体の貨幣供給と需要の関係を通じて表します。BP曲線は国際収支の均衡を示し、経常収支と資本収支の均衡が前提となります。

固定為替相場制と変動為替相場制の違い

マンデル=フレミングモデルでは、固定為替相場制と変動為替相場制の下での財政政策と金融政策の効果について分析します。固定為替相場制では、中央銀行が為替レートを一定に保つために外貨の売買を行い、金融政策の自由度が制限されます。資本移動が完全である場合、金融政策は無効となり、政府支出の増加はIS曲線を右にシフトさせてGDPを増加させる効果がある一方で、中央銀行がマネーサプライを増やすと資本流出が生じ外貨準備を使うことになります。変動為替相場制の下では、為替レートは市場の需給によって決まるため、金融政策が有効となります。政府支出の増加によるIS曲線の右シフトが利子率上昇と為替レート上昇を引き起こし、輸出競争力を低下させますが、マネーサプライの増加は利子率を低下させ為替レートの減価を通じて輸出を促進し、GDPを増加させる効果があります。このような視点から、財政政策と金融政策の有効性とその相互作用を理解することができます。

政策の選択と実際の経済政策への影響

マンデル=フレミングモデルは、実際の経済政策に大きな影響を与えます。特に、経済危機への対策としてどの政策が有効であるかを示唆します。固定為替相場制の下での経済の低迷には政府支出の増加が望ましい政策であり、一方、変動為替相場制の下では金融緩和が効果的です。さらに、異なる政策手段の相互作用を分析することも可能で、財政政策と金融政策の組み合わせが経済全体にどのような影響を及ぼすか理解するのに役立ちます。マンデル=フレミングモデルは固定為替相場制および変動為替相場制の違いを明確に示し、オープン経済における財政政策と金融政策の効果を理解するための非常に有用なツールです。このモデルを使うことで、政策の策定に当たってより精緻な判断が可能となり、実際の経済政策に多大な影響を与えています。