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更新日:2024年10月10日
ミニマックス定理(minimax theorem)は、ゲーム理論や意思決定の理論における重要な概念であり、特にゼロサムゲームにおいてその力を発揮します。ゼロサムゲームは一方が得するならばもう一方がその分だけ損をする類のゲームであり、多くの競争シナリオがこれに該当します。ミニマックス定理は、1950年代にジョン・フォン・ノイマンによって提唱されました。これは、対戦型のゼロサムゲームにおいて、プレイヤーが最適な戦略を見つけるための枠組みを提供します。この定理の典型的な例として、チェスやポーカー、戦略的なビジネス競争があります。プレイヤーは常に相手の動きを予測しつつ、自分自身の利益を最大化するための最良の行動を選択しなければなりません。ミニマックス定理は「ミニマックス戦略」と「マクシミン戦略」という二つの概念を基にしています。ミニマックス戦略は、自分の最大の損失を最小化するための防御的なアプローチです。プレイヤーは、自分がどの行動をとったときに相手プレイヤーから受ける最小の損失が最も小さいものを選びます。一方、マクシミン戦略は、自分の最大の利益を最大化するための戦略で、自分がどの行動をとったときに得られる最大の利益が最も大きいものを選びます。
ゼロサムゲームの設定において、ゲームの行列表現が一般的です。プレイヤーAの行動を行で、プレイヤーBの行動を列で表す行列表で例えば、行列 ¥( A = (a_{ij}) ¥) はプレイヤーAの選択 ¥( i ¥) 及びプレイヤーBの選択 ¥( j ¥) において、プレイヤーAが得るペイオフ(利益)を示します。プレイヤーAは損失を最小化、プレイヤーBは利益を最大化しようとします。ミニマックス定理の定義では、プレイヤーAの視点で考えると、プレイヤーBが最適な戦略を採用した場合における最悪の結果に備える形で準備を進めます。従って、プレイヤーAのミニマックス戦略は次のように定義されます: ¥[ ¥min_{A} ¥max_{j} a_{ij} ¥] プレイヤーBは逆に、相手の戦略を前提にすることで、自分の最小の損失を最大限に防ぎます: ¥[ ¥max_{B} ¥min_{i} a_{ij} ¥] ミニマックス定理はこれら二つの戦略が結果として等しくなる点で成立します。つまり、 ¥[ ¥min_{A} ¥max_{j} a_{ij} = ¥max_{B} ¥min_{i} a_{ij} ¥] この定理が成り立つことで、プレイヤーは自身の戦略を最適化し、最悪のシナリオに備えることが可能となります。
ミニマックス定理の応用範囲は広く、多岐に渡ります。ビジネス競争では、企業が新製品を導入する際、競争相手の反応を予測し、その反応に備える形で戦略を立てます。これにより、最悪のシナリオに対する備えが可能になります。オペレーションズリサーチの分野では、サプライチェーンの最適化、在庫管理、ロジスティクスにおいてもミニマックスの概念が応用され、供給の不確実性がある場合でも最悪の供給不足に対する準備が可能です。さらに、政策決定においても経済政策や公共政策の立案において、最悪の状況に備えた保守的なアプローチが取られます。政策の失敗が重大な影響を及ぼす場合に、そのリスクを最小化するための戦略が求められます。個人の意思決定においても、この理論はリスク管理や投資戦略の策定に大きな影響を与えます。個人が投資ポートフォリオを組む際、最悪のシナリオに対するリスクをヘッジする方法が考えられます。ミニマックス定理は、ゼロサム状況での最適戦略の策定に不可欠なものであり、ビジネス、経済政策、さらに個々の意思決定においてもその力を発揮します。ミニマックスの理念を理解することで、プレイヤーは自身の利益を最大化しつつ、最悪のシナリオに備えることができます。このため、幅広い分野で理論的な基盤として採用されているのです。