MTM(Method Time Measurement)

更新日:2024年11月10日

MTMの基本概念と構成要素

「MTM(Method Time Measurement)」は、ビジネスおよび生産管理において広く使用される手法であり、作業の標準時間を測定・分析するためのシステムです。MTMは、特定の方法に基づいて作業動作を細かく分類し、それぞれの要素にかかる時間を計測・算定することにより、効率的な作業計画や生産性向上を実現します。1948年にH.B. Maynard、J.L. Schwab、G.J. Stegemertenによって開発されました。その基本概念として、MTMは労働強度や作業環境、作業者の熟練度などに関わらず、標準的な作業時間を客観的に評価するための手法です。作業動作を最小単位の要素に分解し、各要素に対する標準的な時間を定めることで、全体の作業時間を計算します。この一連のプロセスにより、効率的で再現可能な作業時間の算定が可能となります。さらに、MTMでは作業を以下のような基本動作要素に分解して分析します:リーチ(手を伸ばす)、ムーブ(移動)、リリース(置く)、グラスプ(つかむ)、ポジション(位置を調整する)、トレッド(足の動作)、サイクル(一連の動作の繰り返し)などです。

MTMの手法と適用例

MTMにはいくつかのバリエーションが存在し、それぞれ異なるレベルの詳細さや適用範囲を持ち、具体的なニーズに応じて使い分けられます。最も詳細なMTM-1はすべての動作要素を徹底的に分析し、高精度な時間算定が可能です。一方で、MTM-2はMTM-1よりも簡便で、動作要素をグループ化しながら近似値を用いて時間を算定します。さらに簡便なMTM-3は、広範な作業分析に適しており、主に短時間での評価が求められる場合に使用されます。また、ビデオ解析を用いたMTM-Vは、ビデオ録画を通じて作業の詳細なデータを収集し、精密な時間分析を実現します。MTMは製造業、物流、サービス業などさまざまな分野に適用され、例えば製造業では生産ラインの設計や作業手順の最適化に用いられます。物流分野では、倉庫内のピッキング作業や商品の梱包・出荷作業の時間を算定するために使用され、効率的な作業配置や動線の見直しが行われます。また、サービス業では店舗内の作業手順の最適化や顧客対応の効率化にMTMが応用されます。

MTMのメリットと課題

MTMを導入することには多くのメリットがあり、例えば作業の標準化により一貫性のある高品質な業務遂行が可能となります。さらに、具体的な時間データに基づいて作業を分析・改善することで生産効率を大幅に向上させることができます。また、作業時間の短縮や無駄の削減を通じてコスト効率を高めることができます。労働環境の改善も期待され、効率的な作業配置と手順の最適化により労働者の負担が軽減され、安全で健全な作業環境が実現します。新規プロジェクトの立ち上げ支援にも有効で、時間データをエビデンスとして計画を策定することができます。しかし、MTMには課題や限界も存在し、例えば初期投資コストがかかります。特に詳細な分析を行うためには専門的な知識とツールが必要です。また、作業環境や手順が変わるたびに標準時間を更新する必要があり、定期的な見直しが欠かせません。さらに、詳細で厳密な手法であるため、実際の作業現場での柔軟な対応が難しい場合があります。そのため、MTMを効果的に活用するには、初期投資やデータ更新の管理を慎重に行うことが重要です。こうした点を考慮しながら運用することで、効率的かつ競争力のある業務運営を実現することができます。