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- TPM(Total Productive Maintenance)
更新日:2024年11月10日
Total Productive Maintenance(TPM, 全員参加の生産保全)は、製造業における設備の稼働率を最大化するための重要なアプローチです。TPMは、企業全体の生産性を向上させることを目的に、設備保全活動を全社員が主体的に取り組むという考え方を基本に置いています。この概念は、1980年代に日本から発展し、後に世界中の製造企業で導入されるようになりました。TPMは以下の4つの基本的な理念に基づいています。まず、全員参加の保全は保全活動が全社的な取り組みで、経営陣から現場のオペレーターまで全従業員が関与するものです。次に自主保全は、オペレーターが自ら設備の基本的な保全活動(清掃、点検、軽微な調整など)を行います。第三の予防保全は、設備が故障する前に対策を講じることで、故障を未然に防ぎダウンタイムを減少させます。そして予知保全は、センサーやデータ分析などの技術を用いて設備の故障を予知し、耐用年数を延ばします。TPMはアメリカの「Preventive Maintenance(予防保全)」を基に、日本の製造業が独自に改良を加えて発展させたもので、歴史的には1960年代から1970年代にかけて徐々に形作られ、1971年に日本プラントメンテナンス協会(現在の日本プラントメンテナンス・プラントエンジニアリング協会)が公式にTPMを提唱しました。TPMの主な目標はゼロ故障(設備の故障を完全になくす)、ゼロ不良(製品の不良率をゼロにする)およびゼロ事故(労働災害を完全に防止する)です。これらの目標を達成するためには、設備の効果的な活用とともに、人材育成、組織全体の取り組みが不可欠であるとされています。
TPMは8本の柱(8 Pillars)からなる活動がその基盤です。個別改善(Focused Improvement)では、小さな改善活動(Kaizen)を継続的に行い、生産性の向上を目指します。従業員個々が自発的に改善のアイデアを出し実行します。自主保全(Autonomous Maintenance)では、オペレーターが設備の基本的な保全を担当し、設備の状態を常に良好に保つための活動です。計画保全(Planned Maintenance)は、設備の寿命延長および安定稼働を目指した計画的な保全活動で、過去のデータ分析や設備診断技術を駆使して故障を未然に防ぎます。教育訓練(Education and Training)は、従業員のスキル向上を図るための体系的な教育と訓練で、設備保全に関する知識や技術を全従業員に浸透させます。初期管理(Early Equipment Management)は、新しい設備の導入時期から効率的な運用を目指す活動で、設計段階から運用保全を考慮し、トラブルを未然に防ぎます。品質保全(Quality Maintenance)は、製品の不良をゼロにするための活動で、設備の異常を早期に検出し、品質問題を未然に防ぎます。TPM管理(TPM in Administration)は、管理部門と製造部門が連携して行う保全活動であり、全社的にTPMの取り組みを推進します。安全・衛生・環境(Safety, Health, and Environment)は、労働災害の予防や環境保全活動で、職場の安全と社員の健康を重視し、安全な労働環境を作ります。
TPMを導入するためのプロセスは通常以下のステップに従います。まず、企業全体でTPMを推進することを公式に宣言し、トップダウンでの支持を明確にする導入宣言を行います。これにより全社員の協力と理解を得ます。次に、TPM推進チームの結成として専門の推進チームを設立し、各部門の代表者やエキスパートをメンバーに加えます。このチームが中心となってTPM活動を進行します。現状分析と目標設定では、現在の設備の稼働状況や問題点を分析し、具体的な目標を設定しますこれによりどの領域で改善が必要か明確にします。教育と訓練では、全従業員に対してTPMの理念や基本知識の教育を行い、自主保全のスキルを高めます。改善活動の開始によって、日常的に小さな改善活動(Kaizen)を行う習慣を作り、各作業者が設備の清掃や日常点検を行い、異常を早期に発見します。効果の測定と評価では、TPM活動の成果を定期的に評価し、改善点をフィードバックしますこれにより効果的な活動が持続的に行えるようになります。TPMの導入により期待される成果としては、ダウンタイムが減少し稼働率が向上することで生産性が向上し同じ労力でより多くの製品を生産できるようになります。また、設備の状態が安定することで品質が改善され、高品質な製品を安定供給することが可能となります。さらに、設備の故障を未然に防ぐことで修理や交換にかかるコストが削減されます。教育と訓練により従業員の専門知識と技術が向上し、問題解決能力や改善提案の能力も高まります。ただし、初期導入のコストや全社員の理解と協力が必要であるなどいくつかの課題も存在しますが、これらの課題を克服した企業は長期的に見て大きな利益を得ることができます。結論として、TPM(Total Productive Maintenance)は、製造業における生産性の向上と品質の改善を目指す全社員参加型の活動であり、8本の柱を中心に据えた活動を通して設備の稼働率を最大化し、ゼロ故障、ゼロ不良、ゼロ事故という目標を実現します。TPMの導入には一定のコストと労力が伴いますが、適切に実行されることで企業全体の競争力を大きく高めることが可能です。