- トップページ
- MBO
更新日:2024年09月10日
MBO(Management by Objectives、目標による管理)は、企業や組織における管理手法の一つで、ドラッカー(Peter Drucker)が提唱したこの手法は、管理者と従業員が共同で目標を設定し、その目標の達成を通じて業績の向上を図るというものです。MBOは、組織全体の目標を明確にし、それを組織の各部門や個人の目標に分解して連動させることで、自律的かつ効率的な業務遂行を図る手法です。MBOでは、トップダウン型の管理ではなく、共同で目標を設定する点が特徴的です。これにより、各従業員が自分の目標達成に対して責任を持ち、モチベーションを高める狙いがあります。MBOの概念は、20世紀中頃にピーター・ドラッカーの著作『現代の経営』で紹介されました。ドラッカーは、管理者が組織の目的に焦点を当て、その達成のために従業員と協働することが重要であると提唱しました。このアプローチによって、組織の目標と個人の目標が一致し、より高い業績を達成することが可能となります。MBOの導入・実施にあたっては、まず目標設定から始まり、組織の基本的な目標を設定します。この目標は明確、具体的、測定可能であり、達成可能であるべきです。次に、各部門やチーム、そして個人に分解された目標を設定し、トップマネジメントから下層部まで目標の整合性を図ります。次に、目標達成に向けた具体的な行動計画を立てます。これにはリソースの配分やスケジュールの設定が含まれ、各個人やチームによる自律的な計画策定を促進し、自主性と創造性を高めます。設定された目標と計画に基づき実行に移し、定期的に進捗を確認し、フィードバックを行います。必要に応じて計画の修正や追加のリソースの投入を行い、最後に目標達成状況を評価し、結果をフィードバックします。評価は公正かつ客観的に行うことが重要で、結果に基づき次のサイクルの目標設定に反映し、継続的な改善を図ります。具体例としてある大手テクノロジー企業や中規模の製造業企業での成功事例を挙げることができます。また、MBOはその特徴から、設定された明確な目標に対して従業員が自発的に責任を持ち高い達成意欲を抱きます。
MBOの最大のメリットの一つは、明確な目標設定です。目標が具体的で明確であるため、従業員の取り組むべき課題がはっきりし、全員が理解できる形式で伝達されます。目標が具体的であることは、組織全体の方向性を統一し、一貫した方向を持つことに繋がります。さらに、従業員が自ら設定した目標に向かって取り組むことで、モチベーションの向上に寄与します。この自主的な取り組みにより、従業員は自身の仕事に対してより真剣かつ積極的に向き合うことができ、最終的には組織全体の生産性と効率を向上させることができます。また、MBOでは上司と部下が目標設定や進捗確認の過程で頻繁にコミュニケーションを取るため、互いにより深く理解し合う機会が増え、効果的な関係性を築くことができます。さらに、目標が明確であるため、業績評価が客観的かつ公正に行われることができ、従業員にとっても納得感のある評価システムが実現できます。組織全体が一体となることで、部署間の協力や情報共有もスムーズに進むのです。具体例として、ある大手テクノロジー企業では新製品開発プロジェクトにMBOを導入し、全ての部門が協力して効率的に目標を達成した結果、新製品が予定通りに市場に投入されました。さらに別の中規模製造業企業では、工場の生産性向上のためにMBOを導入し、最終的に全体の生産性が向上し、不良率も減少しました。以上の事例から、MBOの効果は非常に高く、組織全体の業績向上に寄与することが確認できます。
一方で、MBOにはいくつかのデメリットも存在します。まず、MBOのプロセスは時間とリソースを要するため、その導入や運用には相当な労力がかかります。特に目標設定や進捗確認、評価の段階では多くの業務が必要であり、これらの活動は他の業務とのバランスを取る必要があります。また、従業員にとって新しい管理手法に適応する時間が必要であり、不慣れな者には抵抗感があるかもしれません。これにより、短期的には効率が低下する可能性があります。さらに、達成困難な目標設定によって、従業員に過度のプレッシャーがかかることがあります。このストレスはモチベーションを低下させるだけでなく、職場全体の雰囲気や働きやすさにも影響を及ぼす可能性があります。また、MBOでは目標が具体的で測定可能であることが求められますが、定性的な目標の測定は困難であるため、主観が混ざりやすくなり、公正な評価が難しいケースもあります。このため、目標設定の際には十分な配慮が必要となります。それでもMBOを適切に運用することで、企業や組織全体のビジョンに向かって一体となって働き、業績の向上を実現することが可能です。ただし、MBOの導入を検討する際には、そのメリットとデメリットを十分に理解し、適切な準備と管理を行うことが重要です。MBOが現代の多くの企業で採用されているのは、組織全体が一体となって高い成果を生み出すことができる手法として、その有効性が認められているからです。組織運営において、目標設定と評価を通じたMBOは非常に重要な手法であり、継続的な改善を図りながら効果的に運用することで、持続的な成長と発展を期待することができます。